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ダイオーメンテナンス株式会社
■会社を取り巻く環境
設備停止による巨大な生産ロスを回避するため、プラント・設備のメンテナンス業務の重要性はますます高まっています。大手製紙会社のプラントメンテナンスを支えるダイオーメンテナンスでは、技術力を支える人材の育成は最重要な経営課題となっていました。

・ これまでは、社員の能力を公平に評価するための基準がなく、昇級・昇格の際にその必要性が高まってきていた。
・ 役職や能力に基づく明確な等級が整備されてなかったので、階級ごとのスキルの差が解りにくかった。
・ 社員の現在のスキルを判断する基準がなかったので、能力向上のための目標を立てにくく、キャリアパスの仕組みがつくりづらかった。
Point1
事務系職種の能力ユニットを参考に、当社独自の項目を追加した。職業遂行のための基準も会社の実情に合わせて書き直した。
Point2
各職種に求める職業能力は、連結会社の子会社である当社の独自性を配慮して決定した。
Point3
制度を運用する際には、社員とのコミュニケーションを図り、丁寧な制度説明を通じて新制度導入に対する不安を払拭することに努めた。
私たちは、工場の円滑な稼働を支える、“縁の下の力持ち”的な存在です。
 
株式会社ダイオーメンテナンスは、親会社である大王製紙株式会社の生産工場における機械設備のメンテナンスを一手に引き受けています。これまで、設備メーカーに依頼していた高度で専門的な装置の修理・メンテナンスも自社で行うなど、高い技術力を誇ります。「我々の業務は、ラインや機械にトラブルがあった時に修理をするのはもちろん、工場がスムーズに稼働するため常に点検・整備を欠かさない予防保全が基本です。工場の中で我々の仕事が目立つようではだめです。我々の存在が目立たないということが、工場が問題なく稼働しているという証明でもあるのです」と語るのは、総務部長の内田さん。大王製紙の業務がスムーズに行われるよう、見えないところで常にバックアップする “縁の下の力持ち”的な存在です。このような環境の中で、高品質なサービスを提供するためには、常に社員の技術向上を目指していかなければなりません。そこで、社員の現在のスキルを適正に評価し、伸ばして行く新しい人事制度が必要となっていました。
新しい評価制度をつくるには、評価する側である管理職の意識改革が必要でした。
 
新しい人事制度づくりが始まったのは、平成20年のこと。「これまでの人事制度では、社員の能力を適正に判断する基準がなく、その年の実績や社歴といった曖昧なものさしで判断していました。 昇給・昇格も上司の長年の経験や勘といったものに任せていました」とは、新しい人事制度立ち上げに苦労された総務部の山田さん。愛媛県職業能力開発協会に相談する中で、「職業能力評価基準」の存在を知ったと言います。「まずは部長や課長などの管理職にセミナーや講習に参加してもらい、能力評価の必要性や重要性を徐々に理解してもらいました。そこから、会社全体に浸透させていきました」とのこと。評価を行う管理職が、その必要性や重要性を理解していなければ、制度だけをつくっても会社に浸透していきません。まずは、社内での意識改革に多くの時間を費やしたと言います。また、大王製紙の子会社としてグループ全体の利益を考えて行動しなければならない、といった会社のスタンスも考慮して人事制度を構築することが必要でした。社員共通の評価基準の仕組みを構築すると共に、部署・職種ごとに評価基準を定めなければならないので、新しい人事制度づくりが始まってから、正式に導入するまでに約１年かかりました。
まずは、10段階の「資格別職能基準」の整備を行いました。
 
現在の自分のスキルを客観的に確認でき、将来どの方向性を目指せば良いのか、社員の誰もが一目瞭然に解る評価基準が必要でした。そこで、まずは社員の能力レベルと役職を対比させた10段階の「資格別職能基準」を整備することから始めました。この全職種全部門共通の10段階の等級を柱に、各部署の独自の評価を加えることで、すべての社員のスキルレベルを確認できる評価制度が完成しました。「管理職と一般社員とで、どのような能力の違いを求めていったらよいか、職業能力評価基準は大いに参考になりました」とは山田さん。能力の定義などの具体的な内容は、各部署の管理職と打ち合わせをしながら決めていったそうです。こうして出来上がった「資格別職能基準」は、昇進・昇格のほか基本給や賞与にも反映しています。
当社の独自の経営スタンスを考慮して、カスタマイズしました。
 
職業能力評価基準を活用する際にも、大王製紙グループの一員であることを考慮してカスタマイズしていったと言います。「当社には営業部門やマーケティング部門はありません。社員一人ひとりがお客様からの要望を直接聞き、迅速に実行することが求められます。そのため社員の評価ポイントは、実行力にウェイトを置いています。また管理職は、親会社に対する提案かどうか、グループ全体の利益に結びつく行動であるか、といった点を評価のポイントに置いています。」と内田さん。
昇給・昇格の際の能力レベル確認や社員教育にも活用しています。
 
ダイオーメンテナンスでは、年に１回の昇給・昇格の際に、「その役職や等級にふさわしい能力レベルに達しているか」を判断する基準としてこの評価制度を利用しています。自分の現在のスキルレベルが確認でき、将来資格等級を上げていくにはどのような職能をどのレベルまで習得しなければならないのかが明確になりました。社員の向上心アップや日常の業務のモチベーションアップにも繋がりました。 現在は、多くの社員が資格別職能基準を理解し、資格取得などのスキルアップを目指すようになりました。「毎年5〜6人だった設備保全技能士の受検者数が、今年は20人になりました。これも、社員一人ひとりが自身のスキルアップに積極的に取り組んでいこうという、会社の社風が育まれた効果ではないかと思います」と内田さん。普段の仕事の現場でも部下に対して上司が評価制度を基にキャリアアップへのアドバイスを行うなど、評価制度を導入したことで社内コミュニケーションも活発になったそうです。
社員の声を活かしながら、これからも改善を続けていきます。
 
この資格別職能基準は、昇進・昇級の基準になるだけでなく、給与や賞与の基準になっています。今年（2011年）の4月からは、退職金制度にも適用する予定です。「退職金への適用にあたっては、社員全員と個別に面談し丁寧に説明することで、理解を得ました。また、同時に社員一人ひとりから人事制度についての様々な意見をもらいました」と山田さん。現在の制度では、評価の項目も多く内容的に難しい部分もあるので、まだ社員全員が理解し切れているとは言えません。また、資格等級が上がらなければ給料も上がらない、という社員の昇給への不満もあります。今後は社員一人ひとりの声を活かしながら、よりよい制度に改善していきたいとのことです。現在は、上司評価のみで自己評価は取り入れていませんが、いずれは自己評価も取り入れ、上司評価との乖離をどのようにして埋めて行くのか、制度を整備していきたいと考えています。
［今後の展望と課題］
 

１． 人事制度は、現場の声を聞いて、絶えず改良していくことが大事。社員のモチベーションを高めて会社全体の活力を高めていきたい。
２． 現在は、上司評価のみですが、自己評価も取り入れながら、社員全員に不満のないシステムを目指しています。
３． 今年４月から、退職金制度にも資格別職能基準を反映していく予定です。

(C)厚生労働省